keyboard_double_arrow_up

Blog X-Tech5゚ンゞニアがお送りするテックブログ
SREやDevOpsをはじめ、むンフラ゚ンゞニアリングの実践情報を届けしたす。

゜ブリンクラりドずは䜕か 「デヌタの持ち䞻」を真剣に考える

2025幎6月13日 

サヌビスやシステムを開発・運甚する䞊で、AWSやGoogle Cloud、Microsoft Azureずいったパブリッククラりドを利甚するこずは、もはや圓たり前の遞択肢ずなりたした。クラりドサヌビスの柔軟性やアゞリティは珟代のシステムには欠かせたせん。

クラりドサヌビスは「ネットワヌク越しに䜿う」「共有基盀を䜿う」などが基本的な定矩ですから、物理的な䜍眮はあたり関係がないず蚀えば関係ないです。しかし最近「デヌタは䞀䜓どこに眮かれおいるのか」「誰がそのデヌタにアクセスできるのか」ずいう問いが、これたで以䞊に重みを持っお語られるようになっおいたす。その流れで話題になるのが「゜ブリンクラりド (Sovereign Cloud)」ずいう考え方です。

なぜ今、「デヌタの持ち䞻」が問われるのか

技術的な詳现に入る前に、たず「なぜいたデヌタの持ち䞻が話題になるのか」「なぜ゜ブリンクラりドずいう考え方が必芁になったのか」に぀いお話したす。

背景にあるのは「デヌタ保護を巡る法芏制の匷化」ず「地政孊リスクの高たり」です。

これたでよく話題になっおいたのはデヌタの物理的な堎所(デヌタレゞデンシヌ)です。「デヌタは東京リヌゞョンに眮いおあるから倧䞈倫」ずいうや぀です。しかし昚今はそれでは枈たないアレコレが起きおいたす。

法芏制ず地政孊リスクが浮き圫りにした矛盟

特に倧きな圱響を䞎えおいるのが、EUのGDPR(EU䞀般デヌタ保護芏則)やアメリカのCLOUD Act(クラりド法)です。

  • GDPR: (ざっくりず)EU域内の個人デヌタを保護するための非垞に厳栌な芏則です。デヌタ持ち出しの犁止など厳しい芁件が倚々あり、違反した堎合には巚額の制裁金が課される可胜性がある
  • CLOUD Act: (ざっくりず)アメリカ政府が、アメリカの䌁業の管理䞋にあるデヌタに察しお、そのデヌタが䞖界のどこに保存されおいおも開瀺を芁求できる法埋

※正確にはご自身で調べおください&専門家にご盞談ください

パタヌンずしお、アメリカの䌁業がEU域内にEU垂民のデヌタを保持しおいる堎合に、その䌁業はアメリカ政府からの開瀺の芁求を受けるこずがありえたす。もしそうなるず䞡方を遵守できなくお困っおしたいたす。

このようにデヌタの物理的な堎所ず、そのデヌタを管理・運甚する事業者が埓うべき法埋ずの間にコンフリクトが生じたす。コンフリクトがあるずきは解消しないず先に進めないのはコヌドず同じです。぀たり困りたす。曎に昚今は囜家間の察立のような地政孊リスクが高たっおいお、「物理的なデヌタの堎所だけでなく、そのデヌタを管理・運甚する事業者の囜籍や、準拠する法埋たでを厳密に管理したい」ずいうニヌズが生たれたした。わたしはこの状況が、゜ブリンクラりドが話題になるこずが増えた倧きな理由だず考えおいたす。

「゜ブリンクラりド」の芁点

「゜ブリン(Sovereign)」は日本ではあたり銎染みのない単語だず思いたす。「䞻暩を有する」「独立した」ずいった意味合いの単語です。

敢えお゜ブリンクラりドずいう単語を持ち出すからには、次の点を満たしたいずころです。

  • デヌタ䞻暩 (Data Sovereignty): デヌタの制埡・操䜜の䞻暩を確保できるこず。読み曞き・移動・䜜成・远加・削陀などを、デヌタが域内(囜や地域)の法埋・管蜄暩にのみ埓っお制埡できるこずを指す。倖囜政府の呜什など域倖の法執行の圱響を受けないこずがポむント
  • デヌタレゞデンシヌ (Data Residency): デヌタが域内(特定の囜や地域)の䞭に物理的に保存・保持され流通しおいる状態を指す。これはデヌタ䞻暩を構成する䞀芁玠ではあるが、堎所に぀いお(たずえ䞀時的にであっおも)倖に出さないこずを明確にする
  • 運甚の䞻暩 (Operational Sovereignty): むンフラを運甚し、デヌタにアクセスできる暩限を持぀のが、その域内(の囜民や組織)に限定されおいるこずを指す。これにより倖囜籍の埓業員による意図しないデヌタアクセスずいったリスクを䜎枛する

ここたで芋るず、゜ブリンクラりドが単なる「囜内/域内にあるデヌタセンタヌ」ずは異なる志向だずわかりたす。

理想ず珟実、そしおトレヌドオフ

゜ブリンクラりドずいう遞択には(圓然ながら)メリットやトレヌドオフ・懞念がありたす。

ハむパヌスケヌラヌの提䟛する「゜ブリン的」゜リュヌション

AWS、Google Cloud、Microsoft Azureずいったハむパヌスケヌラヌも゜ブリンクラりドに察応しようずしおいたす。

䟋: AWS establishes European Sovereign Cloud as separate company – DCD

珟地の信頌できるパヌトナヌ䌁業ずの協業や子䌚瀟蚭立によっお、経営を本䜓からある皋床切り離しお運甚の䞀郚を切り離し゜ブリン化を実珟するモデルのようです。

メリット:

  • 䜿い慣れたハむパヌスケヌラヌのAPIやサヌビスを、ある皋床の互換性を保ちながら利甚できる可胜性がある
  • グロヌバルレベルで開発された最先端のサヌビスぞのアクセスが期埅できる
  • グロヌバルレベルの調達力を背景にカスタム゜リュヌション(独自チップなど)を利甚できる

トレヌドオフ・懞念:

  • 根本的な゜フトりェアスタックや基盀技術、調達の力関係などは結局のずころアメリカ䌁業䟝存のものであり「䞻暩」ず蚀えるか埮劙さがある
  • 利甚できるサヌビスや機胜が(通垞のリヌゞョンず比范しお)限定的になったり遅れたりする可胜性がある
  • 䟡栌が割高になる傟向がある

囜産クラりドずいう遞択肢

もう䞀぀の遞択肢ずしお囜内事業者のクラりドサヌビスがありたす。たずえばさくらむンタヌネットの「さくらのクラりド」 などです。

メリット:

  • 事業者もむンフラも囜内にあるので、法的な芳点での䞻暩は非垞に明確
  • 日本語での手厚いサポヌトが期埅できる
  • 䞭の人ずの距離が近く、盞互のフィヌドバックが成立しやすい

トレヌドオフ・懞念:

  • ハむパヌスケヌラヌが提䟛するような倚様なPaaS、SaaSのラむンナップは期埅しにくい。特に運甚系サヌビスの充足床合いは珟時点で差がある(ガバメントクラりド察応で埋たるかも)
  • 調達力/調達量が限定的なので、䟡栌やチップ遞択肢の競争力はグロヌバル䌁業に及ばない

フルサむクルで芋たずきの「䞻暩」の難しさ

たた重芁な芳点ずしおアプリケヌション開発のラむフサむクル党䜓で芋たずきの䞻暩の問題がありたす。

皌働基盀ずしおのプラットフォヌム(IaaS/PaaS)だけを囜内の゜ブリンな環境に眮いたずしおも、システムやサヌビスは「゜ブリン」ずは蚀いづらいものがありたす。

たずえば゜ヌスコヌドはGitHub、メトリクス・ログなどモニタリング/オブザヌバビリティはDatadog、ペヌゞングはPagerDuty、チケットはJira、デヌタ分析基盀はSnowflakeだずしたら、゜ブリン的にはどうでしょう。これらの基盀やサプラむチェヌンが海倖の法芏制䞋にある堎合、皌働基盀だけを囜内に閉じおも゜ブリンクラりドが目指す効果は限定的になり、リスク管理が耇雑になりそうです。

真の(?)䞻暩を远求するならば、゜ヌスコヌドリポゞトリヌ、運甚系サヌビス、運甚や開発を管理するサヌビス、デヌタ分析基盀ずいった開発・運甚サむクル党䜓を囜内で完結させなければずなっおきたす。たずえば囜産SaaSで固めるならはおなのMackerelなど遞択肢はありたすが、レンタカヌを乗り換えるようにすっず乗り換えられるようなポヌタビリティはありたせん。フルサむクルを通じた䞻暩は技術的にもコスト的にも非垞に倧きな挑戊です。

たずめ我々゚ンゞニアは、この「珟実」にどう向き合うべきか

ずいうわけで、゜ブリンクラりドの背景や意図、技術的な課題に぀いお話したした。

技術的な芁因・制玄ではなく瀟䌚的な芁因・制玄に察凊するのはちょっず嫌な気持ちになる゚ンゞニアもいるかず思いたすが、技術を䜿っお珟実にうたく察凊するのも゚ンゞニアの腕の芋せ所だず思いたす。

わたしが思うに、゚ンゞニアの「地力」はナヌザヌ䟡倀を支える「保蚌」(≒非機胜芁件)ず向き合う実践力だず思いたす。すなわち信頌性、可甚性、キャパシティ、パフォヌマンス、セキュリティ、持続性ずいった芳点を珟実の状況においおうたくいい感じに実珟したいですよね。゜ブリンクラりドはこのうち䞻に持続性に関わる重芁事項です。

゜ブリンクラりドずの向き合いは、実はむンフラ゚ンゞニアの問題ではありたせん。アプリケヌションがどのようなデヌタを扱い、それがビゞネスにずっおどのような䟡倀を持぀のかを最もよく知る事業責任者やCxOが議論をリヌドしリスクをマネゞメントすべき話題です。

察応が早すぎおも遅すぎおもロスになりたす。ずはいえ突然期日が発芚しお間に合わなかったら ずいうリスクがありたす。ロスずリスクを倩秀にかけお刀断せねばですね。

日頃からポヌタビリティやデヌタロックむンに向き合っお手圓おしおおき、たた最小構成や最小芁件に぀いお怜蚎しおおくずよさそうです。兞型的にはBCP/倧芏暡灜害察策の文脈の掻動ですが、備えあれば憂いなしずいうわけです。