AI時代だからこそ「地力」を研鑽する。SRE Kaigi 2026振り返り
こんにちは、SREの菊池宣明です。 1月31日に開催されたSRE Kaigi 2026に参加してきましたので、学んだことや感じたことを忘れないうちにレポートとしてまとめたいと思います。
SRE Kaigi 2026とは
SRE Kaigi 2026はSREを中心に知見を共有する技術カンファレンスです。2026年1月31日に東京都の中野セントラルパーク カンファレンスを会場として開催されました。オンライン・オフライン合わせて計800人以上の人が参加した、熱気あふれるイベントとなりました。
個人的に印象に残ったセッション
生成AI時代にこそ求められるSRE(山口さん)
冒頭、「AIがコードや設定を書く時代、SREは不要になるのか?」という、私にとって非常に身近で、少し背筋が凍るような問いからセッションが始まりました。ですが、それに対する答えとして「必要」という一言を聞いた瞬間、内心少しホッとしました。
セッションの中では、昨年の調査レポートですでに90%以上が業務にAIを導入しているという現状が紹介されました。一方で、AIは「良いところ」だけでなく「課題」も増幅させてしまう性質を持っている、という点も非常に印象的でした。
そんな加速し続ける生成AI時代において、SREの「出番」は以下の2点があると述べられていました。
- コンテキストの整備:AIがシステムの状況を正しく理解し的確な判断を下せるようテレメトリや仕様などの情報をAIが読み取れる形式で整えること
- ガードレールの強化:AIによるアウトプットの暴走やリスクを防ぐためPolicy as Codeなどの技術的手段を用いてシステムの安全性を担保すること
特に「コンテキストの整備」に関しては、X-Tech5でもまさに今議論しているテーマでもありました。現在私たちでは、膨大なテレメトリデータをどのようにAIに渡すことで、定点観測会をより効率化し本質的な改善議論に時間を割けるようにするかを模索しています。
この発表を聞いて、自分のキャリアについての視界が少し晴れたような気がします。生成AI時代にも活躍できるエンジニアであり続けるために、SREとして実践できる幅を広げていこうと決心できました。
レガシー共有バッチ基盤への挑戦 – SREドリブンなリアーキテクチャリングの取り組み(小西さん)
どこから手をつければいいのか分からないほどブラックボックス化している課題に対し、真っ向から挑んだ事例でした。対象となったのは長年運用され、もはや秘伝のタレのようになってしまった共有バッチサーバーです。
特に印象的だったのは現状を把握する際に、過去のアラート対応履歴やポストモーテムから「なぜ今この構成になっているのか」という文脈を掘り起こしていた点です。リバースエンジニアリングやコードリーディングから仕様を把握するのは王道だと思うのですが、アラート対応履歴やポストモーテムからも当時の設計意図や隠れたリスクを学べるという視点に気づきを得ました。
今後、自分が同様の困難な課題に直面した際にも、この事例を思い出して粘り強く取り組んでいこうと思いました。
Ask the Speaker
チームを巻き込みエラーと向き合う技術(maruさん)
セッション終了後、登壇者のmaruさんと直接お話しする貴重な機会をいただきました。
そこで深掘りしたのが、「SREが存在しない組織に、いかにしてその文化を浸透させるか」という点です。会話して得られた気づきは、「システムが動いている以上、そこには必ず隠れたSREプラクティスが既に存在している」ということでした。
例えば冗長構成の維持や日々の障害対応などは、まさに立派なSREのプラクティスそのものです。「自分たちはSREをやっていない」とゼロベースで捉えるのではなく、今動いているシステムの中で「できていることを守り、やりかけのものをやる」。この積み重ねこそが、文化浸透において重要であると感じました。
今後、私がSRE文化を広める立場になった際は、まず「今実践されているプラクティスは何か」を分析し、それらを維持・肯定することから始めたいと考えました。また、急にSRE文化を押し付けるのではなく、「やりたいけれど手が回っていないこと」をまず共に解決していくアプローチを大切にしていきたいです。
全体を通しての感想
今回のSRE Kaigi 2026を通じて、私自身のSREとしてのモチベーションが高まりました。
特に強く感じたのは「AI時代だからこそ、個の技術力の真価が問われる」ということです。AIを最大限に使いこなし、複雑なシステムと粘り強く向き合い、組織に適したプラクティスを提案するためには、基盤となるエンジニアリング能力が不可欠です。AIに代替されることを恐れるのではなく、AIを強力な武器にするための地力を磨き続けたいと改めて決意しました。
また、身内ではありますが、弊社CTOの馬場さんによるセッションでも地力を問うメッセージを伝えていたのが印象的でした。「個人の技術力から目を背けない」「突出した個になるための行動を、今日から始める」という言葉は、同じ組織に身を置く私にとって、大きな焚きつけとなりました。
馬場さんの言葉に応えるべく、私もX-Tech5のSREとして愚直に技術と向き合い、自ら手を動かし続けることで「地力」を養っていきます。そして、今回の積み重ねを形にし、次回のSRE Kaigiには「登壇者」として帰還することを目標に、日々精進してまいります。
最後になりますが、運営の皆様、登壇者の皆様、そして参加者の皆様、素晴らしい時間をありがとうございました!

