keyboard_double_arrow_up

Blog X-Tech5エンジニアがお送りするテックブログ
SREやDevOpsをはじめ、インフラエンジニアリングの実践情報を届けします。

毎回説明しなくても最適な作業を進めてくれる。業務スペシャリスト型エージェント「右腕AI2.0改」を構築してみた

2026年6月16日 

こんにちは、代表の石田です。

「AIに指示するたびに毎回背景を説明するのが面倒だ」「自分の会社のルールや状況を知らないから的外れな回答が返ってくる」——そんな経験はないでしょうか。

汎用AIチャットにもメモリ機能はありますが、何を覚えるかはAI任せで、業務ルール・ワークフロー・自社固有の記録を体系的に持たせるのは難しいです。

私はこうした課題を解決するために 右腕AI2.0改 という、業務上のさまざまな仕事をこなすAIエージェントシステムを構築・運用しています。経理・法務・議事録といった業務領域ごとに「スペシャリスト」を定義し、それぞれが専用のワークフロー・判断ルール・過去の記憶を持ったまま動作するしくみです。スペシャリストは会話のたびに自分の担当領域のルールと記憶を読み込んでから動くため、「先月の続きを進めて」という一言で作業が再開します。毎回前提を説明し直す必要がありません。

この記事では、右腕AI2.0改の設計思想・ファイル構成・実際の使い方を紹介します。特に、Claude Coworkだけでなく Claude Code・Codex からも同じスペシャリストを使えるようにカスタマイズした部分を詳しく解説します。


右腕AI2.0改とは

LEOさんが公開した Claude Cowork 向けのAIエージェントシステム 右腕AIシステム 2.0 自体は、単なる汎用チャットではなく、経理・法務・議事録・提案書作成といった業務領域ごとに専用の「スペシャリスト」を定義し、それぞれが独立した知識・ワークフロー・記憶を持って動作します。

これをカスタマイズした私の 右腕AI2.0改 は、Claude Coworkだけでなく、Claude CodeとCodexからも動くようにしています。

この記事では、右腕AI2.0改の仕組みだけでなく、Claude Cowork・Claude Code・Codexをまたいで同じ記憶を共有しながら使うための実装上の工夫まで紹介します。

現在、私は以下のスペシャリストを運用しています。

スペシャリスト 担当業務
ブリーフィング Slack・Gmail・カレンダーを横断した状況確認
打ち合わせ準備 アジェンダ設計・打ち合わせ資料の作成
議事録 文字起こしから議事録を作成
提案書 ヒアリングメモ・議事録・資料から提案書を作成
見積書 提案書をもとに見積書を作成・管理
商材開発 商材企画、競合リサーチ、価格設計、提案資料作成
Web サイト制作・改修、SEO改善、コピーライティング
ブログ テックブログの記事構成・執筆、下書きの磨き込み
経理・財務 仕訳確認・入力、試算表・BS/PL推移確認、月次レポート作成
法務 契約書レビュー、リスク評価、法務文書作成

ファイル構成

右腕AIのデータはすべて Google Drive 上の 右腕AI/ フォルダに集約されています。

右腕AI/
├── CLAUDE.md      ← 全スペシャリスト共通のルール・設計方針
├── AGENTS.md      ← Codex 用エントリポイント
├── MEMORY.md      ← スペシャリスト一覧・自分の基本情報(記憶の実体)
├── NOTE.md        ← Codex 用リダイレクト
│
├── 経理・財務スペシャリスト/
│   ├── CLAUDE.md  ← 役割・ワークフロー・編集ルール
│   ├── AGENTS.md  ← Codex 用エントリポイント
│   ├── MEMORY.md  ← 経理固有の記憶(取引先情報・判断ルールなど)
│   └── NOTE.md    ← Codex 用リダイレクト
│
└── (以下、各スペシャリストフォルダが並ぶ)

各スペシャリストは、会話の冒頭で以下の4ファイルをこの順番に読み込んでから応答します。

  1. ルート CLAUDE.md(全体ルール)
  2. ルート MEMORY.md(自分の基本情報・スペシャリスト一覧)
  3. スペシャリスト固有の CLAUDE.md(役割・ワークフロー)
  4. スペシャリスト固有の MEMORY.md(固有の記憶)

このファイル読み込みをシステムプロンプトで指示することで、AIは「自分が誰で、どう動くべきか」を毎回正確に把握した状態で会話を始めます。


CLAUDE.md と MEMORY.md の役割分担

設計上、CLAUDE.mdMEMORY.md は明確に役割を分けています。

  • CLAUDE.md :「どう動くか」を定義する。役割・ワークフロー・編集ルールなどの行動ルールを書く
  • MEMORY.md :「何を知っているか」を蓄積する。取引先情報・過去の決定事項・進行中案件などの事実を書く

「これを覚えておいて」と伝えると、その場で MEMORY.md に書き込まれます。次のセッションでもその情報が引き継がれるため、毎回背景を説明し直す必要がなくなります。


私のカスタマイズ:Claude Code・Codexにも対応する

右腕AIシステム 2.0はClaude Cowork向けの設計でした。私はこれに加えて Claude CodeCodex からも同じスペシャリストを使えるようにカスタマイズしました。

なぜ複数ツールに対応するのか

Claude Coworkは非エンジニアでも使いやすいUIですが、Claude Codeはターミナルから複数スペシャリストをまたいだ複雑な処理をオーケストレーションするのに向いています。Codexはタスクの非同期実行・並列処理に強みがあるだけでなく、Mac上のCodexを常時稼働させておき、外出先ではiPhoneやiPadからタスクの確認や追加指示を出せる点も大きなメリットです。私の場合、普段からデスクトップアプリを立ち上げた2台のMacを稼働させており、メインの業務MacのCodexから、AI処理専用のMacのCodexにリモート実行させる運用もしています。用途によって使い分けられるよう、同じフォルダ・同じ記憶に3つのAIツールすべてからアクセスできる構成にしました。

AIツール別のファイル対応

Claude Code と Claude Cowork は、CLAUDE.mdMEMORY.md を直接読み込む前提で設計しています。一方、Codex は AGENTS.md を使って作業方針をガイドできる仕様です。

この右腕AIでは、Codexの AGENTS.md から CLAUDE.mdNOTE.md を参照し、さらに NOTE.mdMEMORY.md を読むように設定しています。つまり、Codexの標準機能に対して、この右腕AI側で「同じ記憶を読むためのリダイレクト構造」を追加している形です。

役割 Claude Code / Cowork Codex(この右腕AIでの実装)
全体ルール・ワークフロー CLAUDE.md AGENTS.mdCLAUDE.md
記憶・情報 MEMORY.md NOTE.md(リダイレクト)→ MEMORY.md

記憶の書き込み先はどのツールからでも常に MEMORY.md に一本化されています。

リダイレクト構造

AGENTS.md の中身はシンプルです。「CLAUDE.mdNOTE.md を読め」と指示するだけです。NOTE.md も同様に「MEMORY.md を読め」と指示するだけです。

Codex が起動
  └→ AGENTS.md を自動読み込み
       └→ CLAUDE.md を読む(ルール・ワークフロー)
       └→ NOTE.md を読む
            └→ MEMORY.md を読む(記憶の実体)

Claude Code / Cowork が起動
  └→ CLAUDE.md を読む(ルール・ワークフロー)
  └→ MEMORY.md を読む(記憶の実体)

記憶の書き込み先は常に MEMORY.md です。どのAIツールから操作しても、同じ情報を参照・更新できます。


Claude Coworkでの使い方

Coworkでは、スペシャリストごとに専用の Project を立ち上げて運用します。各Projectのシステムプロンプトに「起動時に4ファイルを読み込め」と指示しておくことで、会話のたびにコンテキストが自動でセットアップされます。

あなたは私の経理・財務を担うスペシャリストです。
応答する前に、以下のファイルを順番に読み込んでください:

1. [右腕AIフォルダのパス]/CLAUDE.md
2. [右腕AIフォルダのパス]/MEMORY.md
3. [右腕AIフォルダのパス]/経理・財務スペシャリスト/CLAUDE.md
4. [右腕AIフォルダのパス]/経理・財務スペシャリスト/MEMORY.md

あとは「先月の試算表を確認して」と自然言語で指示するだけです。経理スペシャリストは、AIが外部サービスを安全に呼び出すための仕組みである MCP(Model Context Protocol)接続を使ってマネーフォワードクラウドにアクセスし、指示を実行します。


Claude Codeでの使い方:オーケストレーターモード

Claude Codeから右腕AIを使うと、オーケストレーターモードで動作します。オーケストレーターとは、指示を受けて適切な担当者(スペシャリスト)に処理を振り分ける司令塔のような役割です。複数スペシャリストにまたがる処理を自動でルーティングします。

ユーザー(Claude Code)
    ↓ 指示
右腕AI(オーケストレーター)
    ↓ MEMORY.md のスペシャリスト一覧を参照し、担当を選択
スペシャリスト(サブエージェント)
    ↓ 4ファイルを読み込みタスクを実行
結果をユーザーに返す

たとえば「この契約書のリスクをチェックして、問題なければ相手先へのメール下書きも作って」という指示を出すと、法務スペシャリストが契約書レビューを担当し、問題点のレポートを返します。

複数スペシャリストにまたがる処理の場合は、オーケストレーターが事前にユーザーへ確認を取ります。サブエージェントの出力は要約・加工せずそのままユーザーに返す設計で、情報の欠損を防いでいます。

この方式のメリットは、各スペシャリストを独立した役割として動かせることです。法務・提案書・議事録のように責務が異なる処理を分離しやすく、複数領域にまたがる依頼でも整理して扱えます。一方で、委任のたびに指示や前提情報の受け渡しが増えるため、構成はやや複雑になり、トークン消費も増えやすくなります。


Codexでの使い方:ダイレクト実行モード

Codexはタスク起動時に AGENTS.md を自動で読み込みます。AGENTS.md の中に CLAUDE.mdNOTE.md を読むよう指示が書かれており、さらに NOTE.mdMEMORY.md へ誘導する構造になっています。

Claude Codeとの重要な違いは、処理の実行方式です。Claude Codeではオーケストレーターがスペシャリストをサブエージェントとして起動し、処理を委任します。一方Codexでは、右腕AI自身がスペシャリストフォルダ内のファイル(CLAUDE.md / MEMORY.md)を直接読み込み、そのまま処理を実行します。これはどちらのアプローチでも同じ処理を実現できるためで、実装上の意図的な使い分けです。Claude Codeではオーケストレーターによるスペシャリストへの委任という構成を採用し、Codexでは右腕AI自身がスペシャリストのファイルを読んで直接実行するシンプルな構成を採用しています。

Codex側の利点は、構成が分かりやすく、単一のタスクを素早く処理しやすいことです。責務分離の明快さではサブエージェント構成に劣る場面もありますが、指示の受け渡しが少ないぶん、軽い処理や一人のスペシャリストで完結する作業には向いています。

Claude Code・Coworkと同じフォルダ・同じ MEMORY.md を参照するため、Codexで更新した記憶はそのままCoworkでも参照できます。


スペシャリストの追加

新しいスペシャリストを追加したいときは、Claude Coworkの右腕AIに「〇〇スペシャリストを追加して」と依頼するだけです。現在のこの右腕AI環境では、以下の作業をまとめて進められます。

  1. スペシャリスト名のフォルダを作成する
  2. CLAUDE.mdMEMORY.mdAGENTS.mdNOTE.md を生成する
  3. ルート MEMORY.md のスペシャリスト一覧に行を追加する
  4. Cowork Project のシステムプロンプトを提案する

仕組みを理解していなくても、会話で指示するだけでシステムが拡張されていきます。


まとめ

右腕AI2.0改を運用して実感しているのは、「毎回背景を説明しなくていい」という効果の大きさです。取引先の特性・ケースバイケースのルール・過去の決定事項・進行中案件がすべて MEMORY.md に蓄積されているため、「先月の続きを進めて」という一言で会話が再開します。

Claude Code・Codex・Coworkの3ツールを同一フォルダで統合できたことで、用途に応じてツールを使い分けつつ記憶を共有できる環境が整いました。

右腕AI2.0改のベースとなる右腕AIシステム 2.0は、LEOさんが公開しているBlogやYoutube動画から始められます。まずはCoworkで試してみてください。必要に応じてClaude CodeやCodexへ拡張していく流れがおすすめです。


[免責] 本記事はBlog投稿時点における投稿者又は弊社環境で確認している事象や手順です。本件に伴い生じた不具合・損害等について、投稿者及び弊社ならびに右腕AIのオリジナルの提供元は一切の責任を負わないものとします。