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Blog X-Tech5エンジニアがお送りするテックブログ
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SRE NEXT 2025 参加レポート:AI が変える SRE の現在と未来

2025年7月14日 

こんにちは。SRE の菊池宣明です。

先日開催された SRE NEXT 2025 に参加してきました。このレポートでは、イベントを通して感じた SRE 界隈における AI の活用状況に焦点を当てています。

SRE NEXT とは?

SRE NEXT は、Site Reliability Engineering(SRE)に関する日本最大級のカンファレンスです。SRE の実践者が集まり、知見や経験を共有する場となっています。

https://sre-next.dev/2025/

セッション全体を通して

今回参加したどのセッションでもほぼ AI の話題が出ており、SRE の現場において AI 活用はもはや当たり前のものになりつつあると強く感じました。

AI が切り開く SRE の未来

特に「SRE with AI:実践から学ぶ、運用課題解決と未来への展望」の発表では、AI 活用のステージが段階的に進化していくことが紹介されていました。現在の AI 活用は単なる効率化の段階を超え、すでに次のレベルへと進化しており、以下のような発展段階が予測されていました。

  • 第 1 段階:効率化 – 作業の効率化をAIに任せる段階 → 到達済み
  • 第 2 段階:トイル削減 – AI を活用することで単調作業をさらに50%削減 → 現在
  • 第 3 段階:自律的 AI – AI エージェントが自律的にSREタスクを実行 → 1 年後
  • 第 4 段階:エージェント連携 – AI エージェント同士が協働してSRE業務を行う世界 → 3 ~ 5 年後

各セッションでのAI活用事例

他のセッションでも作業の効率化は当然のこととして語られていました。例えば「スタートアップでのSRE実践」のパネルディスカッションでは、プロダクトの多言語対応や問い合わせ内容の分析をAIにお願いしているという事例の紹介がありました。

さらに、「Rethinking Incident Response: Context-Aware AI in Practice」の発表では、「Waroom」を使った AI によるインシデントレスポンス支援として、自動運転のレベル分けを参考にした段階的な進化のビジョンが語られました。現状の到達点として、Slack での障害対応中の情報サマライズやポストモーテム生成などの通知記録や一部支援まで対応できており、今後は MCP の力で障害原因の推測や修正コードの自動生成、判断支援や実行までもができるようになるだろうという話でした。

作業効率化と一部支援のところまでが AI の担当領域で、AI が実際に判断して実行するといった事例はまだ無さそうに見えました。しかし、それも時間の問題という印象です。

感想

今回のカンファレンスを通じて、SRE 界隈における AI の現状について知ることができました。現在の AI 活用は主に効率化と支援の段階にありますが、近い将来、AI が自律的に判断し実行するフェーズへと各社が移行していくと思います。今後は企業ごとに独自にカスタマイズされた「SRE Agent」の誕生が予想されますが、AI が思考する過程で本番環境に悪影響を与えてしまうリスクも考慮する必要があります。AI が実行した操作であっても、最終的な責任は人間が負うことになるため、このようなリスクをどのように管理するかが次の課題になると思いました。

また、SRE に関するデータの一元管理の必要性も高まってくると思われます。AI が効果的に学習するためには、様々なツールに散らばるログやメトリクス、デプロイ履歴などを横断的に分析できる基盤が不可欠だからです。しかし、こうした統合プラットフォームの管理は運用コストが課題となるため、データの保管場所と管理方法は慎重に検討すべき事項になると予想しています。

幸いなことに、弊社では経営層も AI 活用に対して前向きな姿勢を示しています。この機会を活かし、SRE Agent の研究を進め、その成果をブログ記事としてまとめていく予定です。ここで公言することで自分自身へのコミットメントとし、確実に実行に移していきたいと思います。

最後に

SRE NEXT 2025 への参加は、業界の最前線で活躍する人たちの知見に直接触れることができ、刺激と学びを得ることができました。イベントを素晴らしい形で実現してくださった運営の皆様に心から感謝申し上げます。綿密な準備と運営によって、参加者全員が価値ある体験をすることができました。この経験を活かし、来年の SRE NEXT 2026 では登壇者として参加することを目標に掲げたいと思います。自分の決めた挑戦に向けて、今から準備を進めていきます!

宣伝

最後に、2025 年 8 月 7 日(木)に開催される「国産サービスで実践するオブザーバビリティ入門」というイベントで登壇します!

このイベントでは、国産サービスならではの導入にまつわる話や、現場で役立つ知見を共有します。書籍の著者やサービス開発者によるパネルディスカッションもあり、現場のリアルな声が聞ける貴重な会ですので、ご興味のある方はぜひご参加ください!

  • 日時:2025 年 8 月 7 日(木) 18:30 受付開始、19:00スタート、21:00クロージング
  • 場所:はてな東京オフィス(3階、セミナールーム)
  • 費用:無料

詳細・お申込みは connpass のイベントページをご覧ください。

みなさまと会場やオンラインでお会いできるのを楽しみにしています!