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Blog X-Tech5エンジニアがお送りするテックブログ
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AWS re:Invent 2024体験記③:技術の学びとラスベガスの魅力を堪能した1週間

2025年1月4日 

この記事はAWS re:Invent 2024体験記の第3部です。全3部作となっておりますので、興味のある方はぜひ他の記事もご覧ください。

はじめに

この記事では私が参加したセッションのハイライトや、ラスベガスでの食事やショッピングの体験を中心にお伝えします。セッションではAWSの最新技術や活用事例に触れることができました。またラスベガスならではのエンターテインメントやショッピングも、この旅を一層特別なものにしてくれました。

これからAWS re:Inventへの参加を検討されている方や初めてラスベガスを訪れる方にとって、少しでも役立つ情報をお届けできれば幸いです。

セッション登録のプロセス

AWS re:Inventでは、例年10月上旬にセッション登録が開始されます。日本時間では深夜帯に開始されるのですが、セッション登録が可能になったタイミングですぐに参加したいセッションを登録することをおすすめします。理由は人気のセッションは早々に埋まってしまうこと、そして事前に登録をしていないと当日スケジュール調整に時間を無駄にしてしまう可能性があるためです。

Walk-up列(キャンセル待ち)のリスク

セッション登録を事前にしていない場合、当日会場でWalk-up列(いわゆるキャンセル待ち)に並ぶことでセッションに参加できる可能性はあります。しかし参加できるかどうかは保証されておらず、もし参加できなかった場合には貴重な時間を大きく失うリスクがあります。そのためできるだけ事前にセッションを予約しておくことが重要です。

事前準備のポイント

AWS re:Inventでは膨大な数のセッションが開催されるため、事前に参加したいセッションをリサーチしておくことが登録をスムーズに進めるための鍵です。公式サイトを活用し自分の興味や業務に関連するセッションをリストアップしておくと良いでしょう。

移動時間の確保

セッション会場は広範囲に分かれており、会場間の移動には時間がかかります。そのため、セッション終了後から次のセッションまでの間に最低でも1時間程度の余裕を持たせることをおすすめします。この時間を確保することで、どの会場にも焦らず移動できます。

バックアップセッションの登録

私は移動時間として確保しておいた1時間にも、念のためバックアップ用のセッションを登録していました。これは移動やその他の事情で予定していたセッションに参加できなかった場合に備えるためです。予定通りに行けない場合でも、バックアップのセッションに参加することで時間を無駄にせずAWS re:Inventでの体験を最大限に活用することができます。

教訓

今回のセッション登録を通じて感じたのは、事前準備の重要性です。AWS re:Inventでは人気セッションがすぐに埋まってしまうため、登録開始後に速やかに行動することが欠かせません。事前に参加したいセッションをリストアップしておけば、スムーズに登録を進めることができ時間の無駄を防ぐことができます。

また会場間の移動には意外と時間がかかるため、セッション間に十分な余裕を持たせるスケジュールを組むことが大切です。私の場合セッション間に1時間程度の移動時間を確保したことで、焦ることなく移動でき次のセッションにも落ち着いて参加することができました。

さらに、移動時間にバックアップとしてセッションを登録しておくことも有効な手段だと感じました。何らかの事情で予定していたセッションに参加できなくても、別のセッションに参加することで時間を有効活用することができます。最終的にはバックアップとして登録したセッションに参加することは無かったのですが、予期せぬ事態への備えがあることで充実したAWS re:Invent体験を実現できました。

参加したセッションのハイライト

参加したセッションのうち興味深かったもの学びがあったものを中心に紹介していきます。

KUB312 | Simplify Kubernetes workloads with Karpenter & Amazon EKS Auto Mode

セッション概要

Kubernetes makes building and running complex applications simpler, but using Kubernetes comes with a unique set of challenges, such as security, networking, interoperability, storage, and scaling. Amazon EKS eliminates the need to install, operate, and maintain your own Kubernetes control planes, alleviating many challenges, but responding quickly to new workload requirements while balancing cost and performance can be difficult. In this session, learn how Karpenter and newly launched Amazon EKS Auto Mode simplify managing your Amazon EKS cluster, from cluster creation and running your application to day 2 operations and everything in between.

Karpenterで課題になっていた「設定の複雑さ」をEKS Auto Modeが解決してくれるため、Kubernetesをこれから運用しようと考えている人や小規模なサービスを構築しているチームにとって助けになるツールになるのかなと思いました。一方で既にKarpenterを活用して高度なカスタマイズを行っている環境では、機能の制約が課題となる可能性があるのかなと思いましたので双方の特性を踏まえた上で選択が必要なのかなと感じました。

HLS211-R | End-to-end biological foundation model workflows for drug discovery

セッション概要

In this session, learn how to orchestrate multiple state-of-the-art (SOTA) biological foundation models (FMs) together to create a seamless drug discovery workflow using AWS HealthOmics. Explore how to combine multiple FMs, and get hands-on experience automating a canonical drug discovery pathway.

AWS HealthOmicsを活用すると最先端モデルを組み合わせた複雑なワークフローを効率的に管理することができると紹介されていました。日本だとあまりAWS HealthOmicsを使った事例を聞けないので貴重な体験ができました。

SAS311-R1 | Optimizing multi-tenant Amazon EKS SaaS architectures

Amazon EKS offers SaaS builders a diverse range of tools and constructs that can be used to support the complex needs of multi-tenant environments. Navigating the landscape of EKS options can be challenging. This chalk talk explores the various EKS tools, techniques, and strategies that can be used to address core multi-tenant requirements, including isolation, deployment, tiering, resilience, and cost. As part of this, discover how Karpenter, native AWS services, and Kubernetes community tools can be used to shape the scale, efficiency, and cost profile of your SaaS offering.

Amazon EKSを活用したマルチテナントSaaSアーキテクチャについて解説が行われていました。特に、KarpenterやKEDA(Kubernetes Event-driven Autoscaling)を用いたスケーリング戦略や、リソースの最適化に関する具体的なアプローチが印象的でした。また、GitOpsの活用によるデプロイメントの自動化は興味深かったです。

COP404 | Best practices for generative AI observability

As generative AI adoption grows, comprehensive observability is crucial for ensuring reliability, transparency, and optimization. In this session, learn about the observability challenges of different generative AI patterns, including large language models, Retrieval Augmented Generation (RAG) architectures, and other emerging approaches. Discover how to use Amazon CloudWatch with a wide range of metrics, logs, and distributed tracing to gain visibility into the lifecycle of generative AI workloads. Additionally, explore the role of LangChain, a powerful framework for building generative AI applications, and how it can be leveraged in conjunction with Amazon Bedrock and Amazon SageMaker to enhance observability across the development and deployment pipeline.

生成AIを本番環境で運用する際のオブザーバビリティの重要性が紹介されていました。特にAmazon CloudWatchやOpenTelemetryを活用して、システム全体の挙動を監視・分析する手法が具体的に示されており参考になりました。また生成AIモデル特有の課題であるHallucinationや倫理的問題、レスポンスの遅延やコストの増大など、POCから本番環境へ移行する際の障壁についても理解できました。これらの課題に対してガードレールの適用やユーザーフィードバックの収集を通じて信頼性と品質を向上させるアプローチは非常に有用だと感じました。

GAM306 | Scaling Epic’s Unreal Engine on AWS with Linux containers

Discover how Epic Games uses Unreal Engine on AWS to create immersive 3D content for their own projects and for other creators. Learn how this compute-intensive workload is optimized to run in containers and orchestrated with standard tools. Explore the modernization of GPU-based tasks for Windows using Linux, enabling them to run at the scale and efficiency needed to support Epic Games’ expanding creator ecosystem.

このセッションではEpic GamesがUnreal EngineのワークロードをAWS上でスケーリングするために取った戦略と、その技術的挑戦について紹介されていました。特に大規模なスケーラビリティと効率性を求めてWindowsからLinuxへの移行を決断した点は、まさに英断だなと感じました。また、Linuxへの移行によってコンテナサイズの削減や起動時間の短縮、そしてコストの大幅な削減といった具体的な成果を得られたといった紹介がされていたのも良かったです。

NFX301 | How Netflix handles sudden load spikes in the cloud

Netflix operates at full active across four AWS Regions, serving their global traffic by intelligently steering users and managing costs via thousands of auto scaling compute server groups. At various times, traffic surges hit their service that could exceed capacity. In this session, walk through how Netflix solves these problems by pairing predictive automated pre-scaling with fast reactive auto scaling in combination with advanced resilience techniques like prioritized load shedding, cross-Region traffic shifting, targeted capacity injection by service criticality, and more. Discover how to maintain a low level of spend while being ready for sudden load spikes.

このセッションではNetflixが突然の負荷スパイクに対処するために採用している戦略と技術について紹介されていました。システムの安定性とユーザー体験を最優先に考えており、特に優先度に基づく負荷削減(ロードシェディング)やクロスリージョントラフィックシフトなどのレジリエンス技術を駆使した方法はとても印象に残りました。さらに高解像度メトリクスの活用やアプリケーションの起動時間の最適化など技術的な細部までこだわり、全体的なパフォーマンスを向上させている点も参考になりました。システムを常にテストし最適な状態を維持するための継続的な努力が、Netflixの高品質なサービス提供を支えていると感じました。

IOT316-R1: Unleash edge computing with AWS loT Greengrass on NVIDIA Jetson

In this workshop, walk through the process of loading AWS loT Greengrass onto an NVIDIA Jetson server via NVIDIA JetPack SDK, remotely logging in to the edge server, and deploying an AWS loT Greengrass component to the edge device. Gain practical experience using AWS loT Core and AWS loT Greengrass to orchestrate and manage edge runtime devices from the cloud. Through a step-by-step, interactive format, learn how to build solutions that extend cloud functionality to edge devices with processing, management, and Al microservices capabilities, while addressing real-world use cases.You must bring your laptop to participate.

このワークショップではAWS IoT Greengrassを使用してNVIDIA Jetsonデバイス上でエッジコンピューティングを実現する方法を学びました。特に、JetsonデバイスへのGreengrassのインストールからエッジデバイスへのコンポーネントのデプロイ、さらにAI/MLモデルの実装まで実践的なハンズオンを通じて具体的な手順とその効果を体験できた点が非常に有益でした。

HYB304 | Implement RAG without compromising on digital sovereignty

As governments and standards bodies develop data protection and privacy regulations, organizations increasingly need to combine the use of generative AI tooling in the cloud with regulated data that need to remain on premises to meet data sovereignty requirements. In this workshop, learn how to extend Amazon Bedrock Agents to hybrid and edge services like AWS Outposts and AWS Local Zones to build distributed Retrieval Augmented Generation (RAG) applications with on-premises data for improved model outcomes. Get hands-on with Amazon Bedrock, AWS Lambda, and AWS hybrid and edge services, and build Amazon S3 compliant workflows using a hybrid S3 compatible solution. You must bring your laptop to participate.

このセッションを通じてRetrieval Augmented Generation(RAG)を実装するための具体的な方法について学ぶことができました。特にAmazon Bedrock Agentsをハイブリッドおよびエッジ環境であるAWS OutpostsやAWS Local Zonesに拡張し、オンプレミスのデータを活用した分散型のRAGアプリケーションを構築する手法は非常に興味深かったです。

参加したセッションの全体所感

多岐にわたるテーマと具体的な事例紹介を通じて、非常に多くの学びを得る機会となりました。各セッションは最新技術やその実践的な活用方法を深掘りする内容で、日々の業務に直結するヒントや新たな発見が多く含まれていました。

特に印象的だったのはAWSが提供するツールやサービスを活用して、複雑な課題をどのように解決しているかを具体的な事例を交えて解説していた点です。たとえばKubernetes運用を簡素化するEKS Auto Modeや生成AIの本番運用におけるオブザーバビリティの重要性など、現在の業界課題に対する実践的なアプローチが非常に参考になりました。

また、NetflixやEpic Gamesなどの業界リーダーによる事例紹介も非常に刺激的でした。それぞれが持つ独自の課題に対しAWSの技術をどのように適用しシステムのパフォーマンスや信頼性を向上させているのかを学ぶことができ、これまでの自分の知識をさらに拡張するきっかけになりました。

さらにハンズオンセッションやワークショップでは実際に手を動かして技術を試すことで、理論だけではなく実践的なスキルを身につけることができました。エッジコンピューティングやハイブリッド環境でのRAG実装など、通常の業務では触れる機会が少ないトピックを体験できたことは非常に貴重でした。

全体を通じてAWS re:Inventのセッションは最新のトレンドを理解し、技術の可能性を実感する素晴らしい機会であると感じました。また各セッションの質が非常に高く、参加することで日々の業務に直結する新たな視点や具体的なアイデアを多く得ることができました。

その他ラスベガスでの現地体験

5k マラソン

AWS re:Invent恒例の5kマラソンに参加しました。このイベントは5kmを走るだけでなく歩いて参加することもできるため、気軽に楽しめるのが魅力です。体力に余裕があれば現地の雰囲気を楽しむためにもおすすめのアクティビティです。ただししっかり走りたい場合は、日本から運動着を持参すると快適に参加できます。

Datadog主催のパーティ

期間中には多くのスポンサー企業がパーティを主催しており、参加することで新たな出会いや交流を楽しむことができます。私はVenetianにあるSUSHISAMBAで開催されたDatadog主催のパーティにお客様と一緒に参加しました。このパーティでは日本人のDatadogユーザーとも交流する機会があり、オブザーバビリティについてさまざまな意見を交換できました。

こうしたパーティはネットワーキングの場としても有益で、業界の最新動向について直接話を聞くことができる貴重な機会です。興味のあるイベントがあれば、積極的に参加することをおすすめします。

re:Play

AWS re:Inventの締めくくりとして開催されるre:Playは、ライブ演奏やさまざまなエンターテインメントを楽しめる特別なイベントです。私はお客様に誘われて参加し、メイン会場での演奏をかなり前の方で鑑賞することができました。演奏者を間近で見ることができる貴重な体験となり、非常に感動しました。

re:Playを楽しむコツとして会場に到着したらすぐにメイン会場に向かい、最前列を目指して進むことをおすすめします。ステージの近くで見るライブ演奏は、通常の体験では得られない迫力と興奮があります。

ダウンタウン観光

時間に余裕があれば、ラスベガスのダウンタウンを訪れるのもおすすめです。特に印象的だったのは巨大な液晶広告が天井を覆うように設置された通りで、そのスケール感に圧倒されました。また、事前に調べておいたTriple 7というお店でビールを楽しみ、ローカルな雰囲気を満喫しました。

Deuceバスの利用

ラスベガス市内の移動手段としてDeuceというバスも便利です。このバスはストリップ通りを中心に運行しており、観光スポット間の移動に適しています。専用アプリを使えば、チケットを事前購入し、QRコードをバス内で読み取るだけで乗車できます。

料金は以下の通りです。

  • 乗車1回:4ドル
  • 2時間乗り放題:2ドル
  • 24時間乗り放題:8ドル
  • 3日間乗り放題:20ドル

1日に3回以上乗る予定があれば、24時間乗り放題のチケットを購入するのがコスパ的におすすめです。また日本のバスと同様に、停車ボタンを押せばバスが停車してくれる仕組みです。

注意点とおすすめの移動手段

Deuceは観光には便利ですが、AWS re:Invent期間中の会場移動にはあまり向いていません。ホテルの近くまでは行けるものの、セッション会場までのアクセスが不便なことが多いためです。そのため、AWS re:Inventが提供するシャトルバスを利用する方が効率的です。シャトルバスは無料で利用でき、会場の近くまで直接移動できるため移動の手間が大幅に軽減されます。

さらに、Deuceを利用する際にはストリップ通りを外れる路線では注意が必要です。観光地以外ではバスの治安が悪くなる可能性があるため、利用は控えた方が良いでしょう。

ショッピング

観光の合間に、ファッションショーモールでお土産を購入しました。その中でも、Bath & Body Worksは特におすすめです。この店の商品は日本未上陸のものであり、ハンドクリームなどのお土産にぴったりのアイテムが多数揃っています。ただし商品によっては100ml以上のサイズのものもあるため、帰りの飛行機で機内に持ち込めません。そのため大きめの商品を購入する際は、預け入れ荷物に入れる準備をしておくことを忘れないようにしましょう。

おわりに

AWS re:Invent 2024は最新技術の学びや業界の動向を知るだけでなく、ラスベガスという特別な場所での体験も含め非常に充実した時間を過ごすことができました。セッションでは実務に直結する知識やスキルを得られ、さらにハンズオンやワークショップを通じて新たな挑戦にも取り組むことができました。

一方でラスベガスならではの観光やイベントそして交流の場を楽しむことで、学びとリフレッシュのバランスを取ることができたと感じています。5kマラソンやDatadogのパーティ、re:Playといったアクティビティは技術以外の部分でも多くの刺激を得られる貴重な機会でした。

今回の体験を通じて、計画的な準備と柔軟な対応がAWS re:Inventを最大限に楽しむための鍵だと実感しました。セッションの事前登録や移動手段の選択、さらには現地でのアクティビティの選び方など小さな工夫が全体の体験を大きく変えることを学びました。

この記事がこれからAWS re:Inventに参加を検討している方や初めての海外渡航を計画している方にとって、少しでも参考になれば幸いです。AWS re:Inventは技術者にとって学びと成長の場であると同時に、新たな出会いや刺激を得られる場所でもあります。次回参加される方が、素晴らしい体験を得られることを心から願っています。

最後までお読みいただき、ありがとうございました!